9年ぶりに労働党から国民党へ政権交代が行われたニュージーランド。新たな内閣の顔ぶれにPansy Wong の名前が入っていた。96年にアジア人としては初めて国会議員になった彼女はアジア人議員の先鋒的存在とも言えるであろう。新しい政府の一員として行政に携わることのほかに、他の移民議員のリーダーとしての大切な役目があるとPansyは言う。
【Profile】上海生まれ。香港で育ち、1974 年に留学生としてニュージーランドにくる。96 年にはアジア人初の閣僚になる。現在大臣である省庁の仕事のほかには自分に続くアジア人の大臣になる人を育てていく必要性を強く感じている。 |
新政府での最初の課題
日本人の皆さんこんにちは。今回の選挙では私たちを応援してくださった人もいると思いますが、ありがとうございました。さて、新しくなった政府でも私はMinister for Ethnic Affairs とMinister of Women's Affairという任を受けることとなりました。ですから、私自身がまず、取り組むべき課題はこの二つの省庁に関することになると思っています。移民の国であるニュージーランドには、いろいろな民族や人種の人間が一つの国に住んでいる状態になります。その民族や人種が違えば、当然、考え方や習慣が異なってきますので、公平でないと感じることが起きたり、あるいは実際に公平でないことが、起こったりすることも多々あります。
また、考え方の違いから、この国での生活があまり快適ではないと感じてしまうこともあるかもしれません。こうした問題を明らかにし、解決する策を講じるのが Ethnic Affairs の一つの役目です。

そして、もう一つのWomen’s Affair は女性のための機関です。民族間で起こっていることが、男性と女性の間でもあります。もちろんその内容は異なりますが、やはりここにも公平でないことや、快適ではないことが生じてくることがあるのです。 Ethnic Affairs とWomen’s Affair を任されている私は、民族、人種、性別、年齢に関係なく、それぞれが持っている目標や夢が実現できるよう、様々な壁を取り払っていくことが急務だと思っています。たとえばWomen’s Affairs だけでも、こういった問題は今の時点で報告されているだけでも9000 近くもあります。ただしそれらは氷山の一角で、同じ能力なのに賃金面で格差があるとか、待遇面で格差があるといった部分で、報告されていないケースのほうが圧倒的に多いと思います。
プラスの部分を伸ばす
こうした問題のケースを検証し、行政の面から改善していくというアプローチと共に私は、逆に成功したケースを大きく取り上げていき、その成功パターンを活用、応用して行きたいと思っています。なぜなら、社会でリーダーシップを取っている女性やニュージーランドで成功した移民者など、例え小さな成功でも、そういった人たちを多く取り上げることで、後に続く人が増えてくると考えているからです。単に負の部分を取り除くだけでなく、すばらしいことを表に出して、その数を増やすほうが効果的なこともあると思います。
私自身がアジア人初の閣僚になったことの意味も、同じ部分にスポットライトを当てることができると思います。移民者だって被選挙人としてニュージーランドの政治に参加できる。移民者だって入閣することができる。私が政治の舞台でそれを体現することは、社会も同様のことを普通のこととして認める第一歩になったと思っています。実際、今回の選挙でも韓国人、インド人、フィジー・インディアンなど多くの移民組の議員が出てきています。政府の中でそれらの移民組議員を導いていくのも私の役目だと思っています。
ニュージーランドで広げられる可能性
私が常々思っており、口に出して言っていることは、あなた方、日本人も含めて、私たちアジア人がニュージーランドに移民して生活すること、そしてそれぞれが考える成功を収めることは、当然ながら困難を伴います。言葉の問題と言うのもその一つの壁になっているのも事実です。能力があってもコミュニケーション技術が少し悪いためになかなかうまくいかないというケースです。しかし決して不可能なことは何一つないということです。それをこのニュージーランドから世界に向けて発信しているのです。個人個人がどんなバックグランドにあったとしてもニュージーランドでは政府に入ることも可能なのです。
私の選挙区はオークランド東にあるボタニーで、ここにはいろいろな人種が混在するエリアです。その場所で私が選ばれたということは、私と同じ考えの人が多くいるということの証明でもあると考えています。私が初めてこの国に来たのは留学生としてのことでした。ニュージーランドの教育システムはアジアのそれとはことなり、プロセスを学ぶことを大切にしています。一つのアイディアを大切にして、それを育てていくことに重きを置いています。記憶してそれをテストするという方法とは違った観点から教育が行われていると思います。これはどちらの方法が優れているということではなく、どちらがその子供に合っているのかと言うことだと思います。
私の場合は断然ニュージーランドのプロセスや考え方に重点をおく方法が合っていましたし、日本を含めて、世界にはそちらの方が合っているという人も多くいるのではないかと思います。今までに考えつかなかった海外での教育の選択肢として、そして、自分の国だけで実現が難しい、さらに上を目指す教育の選択肢としてニュージーランドを考えていただきたいと思います。そういった部分では、これからも、海外からの留学生がどんどん増えていくことが予想されますので、国として留学生を受け入れやすい体勢を整えていく必要性を感じています。こうしてこの国で教育を受けて育った留学生が、そのままニュージーランドにとどまり社会に出て行く機会も増えていきます。そういった未来のことを考えても、今、あらゆる面でアジアの人たちが、移民してきた人たちが暮らしやすい土壌を耕しておくのは大変重要なことだと思います。
アジア人議員としての課題
<知者不惑、 仁者不憂、 勇者不懼>
という論語の一説。知者は道理に明るいから迷うことがない。仁者は道理のあるところに安んじているから心配することがない。勇者は意気盛んで道理をつらぬくことに果敢であるから、恐れることがないという意味がある。
私はみんなに愛される大臣になりたいと思っています。それは「ああ、パンジーがやっているんだから、私たちだってできるよ」と、どの人種であっても男性でも女性でも、全ての人が自分に自信を持って生活できるような国になって欲しいと言うことです。つまり、アジア人や移民者とニュージーランドの架け橋になることです。この雑誌を読んでいる、今、ニュージーランドにいる人も、これからニュージーランドに来ようと考えている人も、十分にこの国を楽しんでもらいたいと願っております。

